きみのことの続きです。
あきらめ
――そんな簡単に人の脳っていうのは出来ていないんだよ
いつか大地に言われた言葉がぐるぐると回る。
本当に、簡単なものじゃない。
自在に忘れられればどれだけ楽なんだろうか。
約束どおり、大地についていろいろと聞いた。
一人になった後、帰り道で今日聞いた内容を反芻する。
誕生日、血液型、家族構成、好きなものと嫌いなもの。
忘れないようにしようと、一度しか聞かない情報を頭に詰め込んだ。
俺はアイツと違って律から大地の話を聞かない。
だから本人の口から聞いたことを必死で覚えるしかない。
「やっぱりアンフェアじゃねーか」
本人から聞けたところで、忘れてしまったら無意味だ。
どんなことだって結果が大切なんだから。
最後の質問を思い出し、今度はため息に変わる。
……最後に大地の好きなタイプも聞いた。
聞いてどうするんだと思いながら。
どうせ自分は最初から対象に成りえないのに。
「明るくて素直な子、か」
暗にかなでのことでも言ってるのか、と思ったが考えても仕方がない。
「簡単じゃないな、本当に」
舌打ちをして地面を蹴る。
こんなことをしても何も変わらない。
性別も、性格も、彼の対象にはなれないのだ、と。
どれだけ努力をしても、結果を得られることはないんだ。
――そんな簡単に人の脳っていうのは出来ていないんだよ
アンタの言うとおり簡単じゃないんだな。
この感情も、記憶も、自在に操れればどんなに楽だろうか。
- 作品名
- あきらめ(響也×大地)
- 登録日時
- 2010/04/17(土) 16:13
- 分類
- その他CP