次々と大地の口から流れる言葉に俺は絶句する。
「誕生日は3月31日。血液型はA型。好きな食べ物はカツカレーで、メロンソーダが苦手」
俺が教えたわけでもない俺の情報がコイツの脳内に入っていると思うとゾッとする。
「なんでそんなこと覚えてるんだよ」
純粋に疑問に思うと、大地もうんざりした表情で答える。
「律が何度も言うせいで覚えた」
こんなことならひなちゃんの情報をたくさん知りたかったよ、と。
「だったら忘れればいいだろ」
「そんな簡単に人の脳っていうのは出来ていないんだよ」
はぁ、とため息をつきながら言う。
ため息をつきたいのはこっちだ。
「本当に律は響也のことが好きだよね」
あのバカ兄貴。
自分だけならともかく、周りの人間にまで覚えられるってどんだけ話してたんだ。
「ちなみにかなでのことは?」
「ひなちゃん?いや、全く覚えてないよ」
出来れば誕生日前までには誕生日を知っておきたいよね、というので仕方なく教える。
……はぁ、俺は一体何をやってるんだ。
「じゃあ響也は俺のことどれぐらい覚えてる?」
大地の質問に首を捻る。
「久しぶりに律にあったんだからお前のことを聞いてるわけがないだろ」
俺の答えに大地は満足したのか笑う。
「そりゃそうだ」
だがそれに反比例して俺の気持ちは沈む。
アンフェアだ。
「なんか納得いかねぇ」
何が?という大地に指を突きつける。
「アンタだけ俺のこと知ってるっていうのが気に食わねえ」
「じゃあ律に聞きにいくかい?」
大地の答えに、思わず唸る。
そうじゃないだろ。
「アンタがいるんならそれで十分だろ」
突きつけてた指で、思わず大地の袖を掴む。
……何こんな女々しいことしてるんだ、俺はっ!
はっと気付いて慌てて手を離す。
大地は口を開けた状態でこちらをみている。
「いや、今のはナシ。何もしてない。質問も律に聞く」
慌ててさっきの自分の行動を取り消そうと思うが、もう遅いことは自分で分かりきってる。
両手を彼の前で振るが、大地は気にせず楽しそうに笑ってて俺の髪を撫でる。
「やっぱり兄弟だな。律と似ていてかわいい」
わざと髪をいじられると、ただでさえクセではねている髪が余計にぐしゃぐしゃになる。
だが大地の言葉でムシャクシャしている頭にはちょうどいいかもしれない。
「……やっぱり兄貴かよ」
「……やっぱり律か」
思わず出た独り言が重なる。
「やば」
上を見れば大地が手元に口を当ててそっぽを向いてた。
一体今コイツはなんて言ったんだ?
困ったように頭を掻いて、あーうーと唸ってから大地はこんな提案をしてきた。
「わかった響也。今のはナシだ。さっきのお前の言葉もナシにする」
いいな?と。
結局お互いに分かられてるんじゃねーか、というツッコミを入れたかったが切羽詰った様子に思わず了承をしてしまった。
「その代わりにお前の質問に答えてやるから」
出された交換条件は俺にとって満足がいくものだったので。
「よし、乗った」
彼の腕に拳を軽く当てて、了承の返事をした。
自分の知りたいことは自分で聞けばいい。
そして、彼のまだ知らないことは俺が教えればいい。
ただそれだけだ。
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チョ子様リクエスト 響也×大地
- 作品名
- きみのこと(響也×大地)
- 登録日時
- 2010/04/11(日) 20:31
- 分類
- その他CP