一学年。
この差が縮まればいいのに。
桜も散り蝉が鳴き始める頃の他愛もない行為。
たったそれだけのことで俺は
――俺は、全部、手に入れられてしまうんや……
母親から聞いた話に目の前が暗くなる。
「蓬生君、入院することになったの」
七月、蓬生が倒れた。
元々暑いのは苦手だと言っていたが、そこまで酷いとは思っていなかった。
つい先日も暑い中二人で走り回って悪ふざけをしていた。
もしかして自分のせい、かと。
考えた頭につい先日の出来事を思い出す。
「短冊……」
自分の書いた願い事を思い出し、まさかと思う。
いや、さすがにそんなことはない。
ないはず、だ。
「ありえないだろ」
そう思いながら、思い込むようにしながら、無意識に上がっていた息を整える。
違うと頭では分かっている。
だが、あまりにも都合が良すぎる。
「俺の、せいだ……」
※ ※ ※
今ではこんなに元気なのに、と花見を楽しんでいる彼を横目で見る。
「そんな恥ずかしがることないやん」
楽しそうに笑う声が風に揺れる。
やっぱり儚げ、という言葉が似合ってしまう。
中身は強かなのに。
「千秋は本当にまっすぐなええ子やね」
過去の俺の行動を思い出して、カラカラと笑う。
悔しいが、自分は何も言い返せない。
「そんなに笑うことはないだろ」
子供の真剣さは大人になってみると大したことではない。
でも、あの頃は確かに必死だった。
必死で、悩んでいた。
※ ※ ※
俺のせいだ。
「アカンわ」
蓬生の声が温度をなくす。
目の前が白くなる。
もう、駄目だ。
自分が望んで手に入れてしまったものなのに。
「ちゃんと話してくれへん?」
珍しく、いや初めて見る彼の苛立っている様子に驚きを隠せない。
だがここでしっかりと話をしないと。
手を握り締め、息を吸う。
「俺、蓬生と学年が違うのが嫌やったん」
蓬生は俺から視線を外さない。
「だから」
次の言葉が上手く続かない。
「だから?」
蓬生が続きを促す。
もう一度ゴクリと唾を飲み込み、蓬生をしっかりと見る。
「七夕にお願いしたんや。一緒の学年になりたいって!」
その後まもなく蓬生は倒れ入院をした。
さらにその数ヵ月後、自分と同じ学年になることを知った。
だから自分のせいで蓬生は倒れ入院してしまったんだ。
「……で?」
蓬生が、不思議そうな顔でこっちを見ている。
「以上だ」
と俺が言ったと同時に、蓬生は噴出した。
つい先ほどまで怒りを露にしていたのに、今は笑って肩を震わせている。
一体何が面白いのか。
こっちは真剣だというのに。
「ホント千秋といるとおもろいわ」
留年してよかった、とまた分からないことを言う。
そして、俺の頭を撫でる。
「千秋のせいやないよ。留年したのは俺のせい」
だから安心し?と宥められる。
「これからは一緒やから」
その言葉に安心してしまった俺は彼の肩に頭を預けた。
- 作品名
- 思い出3
- 登録日時
- 2010/04/10(土) 21:48
- 分類
- 未分類