部活の昼休み、珍しく冥加と昼をとった。
「そろそろ戻らないとね」
時計を確認して僕が言うと冥加はただ、そうか、と頷く。
そういえば、と思い彼の左手首をとる。
「天宮?」
驚いている冥加を無視して手首に自分の手を当てて撫でる。
そこにあると思っていたものが無く、絶句する。
たしかに思い返してみれば、行為の時だって邪魔だと思った記憶が無い。
「冥加、腕時計してないの?」
純粋に疑問だった。
ただの一生徒ならいざ知らず、天音の運営をやっている人物が何故時計をつけていないのか。
よく街にいる女子学生みたいに携帯電話で確認をしていても、それはそれで困る。
七海あたりが嘆きそうだ。
「なんだそんなことか」
フン、と無駄に自信有り気に言われる。
「お前が横にいるなら携帯する必要はないだろう?」
つまり、他力本願ってことか。
「じゃあ僕がいなくなったらどうするの?」
ふふと微笑いながら聞くが、冥加はやはり強気な態度を崩さない。
「貴様はいなくならないだろう?」
何がそんなに自信があるのか。
「そうでなければ函館にまだいたはずだ」
違うか、と。
そんなの、時計をしていない理由になんかなるはずがないのに。
それでもあの邸を出たときから、彼についていくことにした。
それだけは、事実だ。
「そうだね」
なら、彼の言うように僕が時計になればいいのか。
面倒だけど、彼の時間が僕を基準に回る。
そう考えると、悪くない。
- 作品名
- 時計
- 登録日時
- 2010/06/20(日) 02:18
- 分類
- 天宮×冥加