キスをしよう。
何の脈絡もなく、ただ一言呟く。
目の前の彼はただ不機嫌そうな顔をするばかりだ。
「一応聞くが、何故だ?」
彼の頬に手を添えて、息がかかるほどの距離になる。
「したいから、じゃ駄目かな?」
そのまま距離をつめようとすると、彼は目を閉じる。
だが、僕は口付けをせず頬を寄せるだけにする。
予想外の感覚に驚いたのか、冥加は息を飲んだ。
「そんな顔しないで」
そんな図体なのに可愛らしい顔をしないでほしい。
歯止めが利かなくなったらどうするの。
「冥加はキスしたい?」
僕の質問に彼は何も答えない。
何も言わない彼をからかいたくなり、彼の耳たぶを舌先で舐める。
「っ……やめろ」
望みどおりの反応をする彼。
だが拒絶の言葉を口にしていても、僕の髪に触れるその手は優しい。
期待をしなければ僕ごと振り払っているのに。
「どうする?冥加」
君はこれからどうしたい?
言葉に出さず、キスもせず、ただ触れるだけ。
君がキスをしたいと言うまで僕は待つ。
「冥加」
そしてもう一度同じ言葉を言う。
――キスをしよう。
- 作品名
- 接吻
- 登録日時
- 2010/05/20(木) 01:35
- 分類
- 天宮×冥加