「夏のデートといえば?」
僕の言葉に、七海は生真面目に考えてくれるがもう一人の人物は
「くだらない」
質問自体を一蹴する。
そんな冥加を無視して、七海にどう?と尋ねれば真剣に返してくれる。
これはそれでからかいの種になりそうだ。
「俺は山もいいと思います」
「避暑地か。それもいいアイデアだね」
きっと七海の頭では
「海!ぜ~ったい海!!海じゃないなんて宗介もハルちゃんもおかしいんじゃないの?」
と友人が騒いでいるのだろう。
はは、と力なく笑う声が溜息へと変わる。
「それじゃあ今度合宿に行こうか」
「何を勝手に……」
「本当ですかっ!?」
文句を言おうとした冥加を、嬉しそうにする七海が遮る。
今はいいけれど彼の言葉を邪魔したと気付いたらまた落ち込むのだろう。
「函館天音で星奏と合同合宿なんていいと思わないかい?」
僕の提案に冥加の目つきは一段と険しくなる。
「ふざけるな」
「ふざけてないよ」
「俺も天宮さんの提案に賛成です!」
すっごく楽しみです、と嬉しそうに言われてはさすがの冥加も言葉を詰まらせる。
僕が同じことを言っても無視の一点だろうに。
やはり純粋な心というのは強いものだね。
「それじゃあ小日向さんたちにも伝えておくよ」
「だから」
「きっと喜ぶと思うよ」
小日向さんのリアクションを想像する。
きっと本当に嬉しそうにするのだろうな、と考えていると冥加はまた溜息をつく。
「はしゃがれて怪我をされては迷惑だ。きちんと引率しないと……」
「じゃあ決まりだね」
こうして今年の夏の最後のイベントが決定した。
(続かない)
- 作品名
- ララスペ6月号の天音
- 登録日時
- 2010/05/10(月) 21:43
- 分類
- NL