「お誕生日おめでとう!」
電話で突然呼び出され、菩提樹寮まで来てみればラウンジにはホールのケーキがある。
その横には17本のろうそく。
「小日向先輩、これは?」
ついでに、今ここには
「えー?今日はハルちゃんの誕生日でしょ?」
「何か問題でもあるのか?」
「響也さん、多分ハルはそういうことじゃなくて」
宗介の言葉が続く前に僕は口を塞いだ。
「いえ、別に何もありませんっ!」
だが、僕の言葉を逃さない人は他にもいて
「ひなちゃんと二人の方がよかったってとこかな」
「そうか」
「ちがっ……いませんけど……」
響也先輩はともかく、宗介やゴールデンウィークを利用して遊びに来ている新、その上卒業した榊先輩と如月元部長までいる。
「せっかくのハルくんの誕生日だからみんなで祝いたくて」
ここまで人数を集めた本人はのほほんとした表情でこんなことを言う。
別に、小日向先輩が鈍いのは今に始まったことではない。
それに、こんな先輩だから僕は好きなのだから。
「すごく、嬉しいです」
本当は二人きりで祝って欲しかったけれど。
今のこの笑顔が僕にとっては何よりのプレゼントだから。
「二人きりの世界禁止ー!」
「うわっ」
新に背中から抱きつかれ体勢をくずす。
「みんなでハルちゃんのためにケーキを作ったんだよ」
もう一度ケーキを見れば、ろうそくが立てられていた。
榊先輩がライターを使って火をつける。
宗介が電気を消すと部屋が薄暗くなり、小日向先輩の声を合図にハッピーバースデートゥーユーと歌が始まる。
「ハッピーバースデートゥ、ハル」
子供の頃にしたように、一気に火を吹き消す。
こんな風に誕生日を過ごしたのは久しぶりかもしれない。
「おめでとーハルちゃん」
そう言って、なぜかナイフを渡される。
意味が分からずとりあえず受け取ると、その手を小日向先輩が取る。
これではまるで
「ってこれじゃ結婚式じゃねーか!」
響也先輩のツッコミで一気に自覚し顔が赤くなる。
先輩の顔を見れば、僕に負けず劣らず赤くしている。
「あと一年」
隣の先輩が僕を見て微笑む。
「あと一年で結婚できるね」
お願いします。
そんな顔を真っ赤にしてそんなことを言わないでください。
「じゃあ来年には祝儀を持ってきた方がいいだろうか」
「そういう問題じゃないだろ」
まだ結婚できない僕たちだけどケーキに刀を入れる。
「ハルちゃん幸せになってね」
「新うるさい」
本当に結婚するときも、こうやって祝われるのだろうか。
気恥ずかしく思い、ナイフを置いてから先輩を見る。
「先輩」
近い将来、その日が来ればいいであろうと思う。
「先輩、大好きです。あなたを幸せにします」
- 作品名
- HappyBirthday(ハル×かなで)
- 登録日時
- 2010/05/04(火) 20:22
- 分類
- NL