「ほらね、天宮くん言ったとおりだったでしょう?」
何も見えない中、御影さんの声が聞こえる。
心の中で、そうですねと頷く。
実際に声に出すのは与えられる快楽への返答。
言葉にならない甘い声を部屋に響かせる。
もう、僕には何も残っていない。
「セイ、残念です。あなたノ音楽ハ変わった。しかし」
先生は僕の髪に触れながら言う。
これしか縋るものがないのに、それすら許されないのか。
それは、嫌だ。
動きを激しくし、声もあげる。
自然と涙が溢れるが、汗と混じりただ体から流れる水分にしかならない。
「また音を無くしましたね」
やっと小日向さんと一緒に手に入れた音楽を、僕は無くした。
また、僕は一人になってしまうのだろうか。
嫌だ。
怖い。
「天宮くん、あなたはこれからどうしたいの?」
優しい声色で、悪魔が囁く。
音楽を諦めたけれど、先生を諦めきれなかった彼女。
僕も、彼女と同じ道を歩もう。
先生の享楽のための道具になる。
――もうそれしか、僕には道はないんだ。
白い部屋で一人待つ。
時計もなく、テレビもなく、ただあるのは黒のピアノ。
ここで許されているのは、ピアノを弾くことと先生とセックスをすることだけ。
ただここで待ち続ける。
白い部屋。
まるで、雪のようで。
遠い故郷を思い出し眠る。
明日には先生が来てくれる。
幼い頃にも何度も思い続けたように、今もまた
あのときのように、連れ出してくれる『彼』はいない
- 作品名
- 残滓
- 登録日時
- 2010/04/27(火) 01:45
- 分類
- 未分類