天宮の趣味は少しおかしい。
どこがおかしいのかと言われると、全てでしかない。
そもそも俺に欲情できるという時点で普通ではない。
……念のために断っておくが、男に欲情できる男がおかしい、と言う意味で俺がおかしいわけではない。
「そろそろ観念したらどう?」
「誰が……」
壁に追い込まれている俺の言葉は彼の唇に妨げられた。
口を真一文字に閉じ抵抗をするが、彼はお構いなしに唇を舌でなぞる。
「そんなに嫌かい?」
不思議そうに聞いてくる天宮が不思議でたまらない。
嫌に決まっているだろう。
「僕の家ならいいのに?」
ふふっと耳元で笑う声がする。
「ここなら誰も来ないし鍵もかけた」
それでも駄目かい?と俺の学ランのボタンをはずしながら言う。
「そういう問題じゃない」
「じゃあどうして?」
やることはいつもと同じだよね?と、今度はシャツのボタンに手をかける。
手で押しのけようとするがなぜかするりとかわして体を寄せてくる。
「学校でやるなんて信じられん」
「そう?行為自体が同じなら場所なんて関係ないと思うけど」
一つ一つ淡々と天宮はボタンを外す。
そして、俺の肌に指で触れる。
胸元からつぅっとへその辺りまでなぞる。
指の感覚に気をとられていると、胸元にキスを落とされる。
「場所が変わると雰囲気も変わるんだね」
ふふっという笑い声。
確かに行為自体はいつも通りでしかない。
彼の手はそのまま下がり俺のものの形を確かめる。
「そんなに嫌がるのは、函館を思い出してしまうから?」
彼に言われてより意識をしてしまう。
むせ返るような薔薇の匂いと閉鎖的な空間。
横浜であって横浜でない、天音という独特な空間がこの屋上庭園にはある。
「そんなわけがあるか」
天宮は俺のものを取り出し、舌で先端を舐める。
「そうだね」
でも、と言って天宮は歯を立てる。
痛みで声を上げそうになるが堪え、天宮を睨む。
だが当の本人は笑っていて
「体はそうでもないようだね」
その声に温度はない。
彼の言葉の通り、俺自身は既に昂ぶっており行為の続きを求めてしまっている。
「ねえ冥加」
温度を感じないのに熱を感じる彼の声は、クスクスと楽しそうに笑う。
それがこの庭園そのもののようで不気味に感じる。
「昔のように言ってみようよ」
何を、どうしてほしいのか。
言葉に出して懇願しろ、と。
「お前は何がしたいんだ」
「それは冥加が決めることだよ」
わざと意味は繋がっているが、言いたいこととが食い違っている返答を返される。
彼の求める言葉を言わない限りずっとこの状態になることは目に見えている。
「……お前が、欲しい」
これで満足か?と尋ねれば、天宮はまた笑う。
「何が欲しいのか、どう欲しいのか。ちゃんと言って」
そうじゃないと分からないよ、と。
わざとらしく言う天宮を睨むが柳に風。
「ねえ冥加、言ってくれないかな」
決して言うものかと思っても、最終的には彼の思うがままになってしまうのだ。
- 作品名
- 此処
- 登録日時
- 2010/04/24(土) 01:44
- 分類
- 天宮×冥加