「納得いかねぇ」
芹沢の淹れた紅茶を飲みながら東金は不服そうにしている。
たまたま通りがかった八木沢はそれに付き合わされている形だ。
「しょうがないだろ、うちは和菓子屋なんだから」
それが嫌なら紅茶じゃなくて麦茶にすればいいじゃないか、と。
何に対して納得いかないのか聞いていない彼は思いつく原因が『紅茶と和菓子の食べ合わせ』のことかと思い話をした。
「そうじゃない」
東金はカップをソーサーに置き、髪をかき上げる。
「蓬生の身長のことだ」
はぁ、と八木沢はいまいちつかめないので続く言葉を待つ。
「あいつ、幼稚園の頃は一歳年上なのに俺と同じくらいだったんだぞ。それなのに今のアイツはなんなんだ」
二人が並んでいるところを思い浮かべる。
「別に普通じゃないかな?」
たいした身長差ではないし、それを言ったら八木沢と東金の方が身長の差は大きい。
「そうじゃなくてだな……」
上手く言葉に出来ない東金は額に手を当てて考える。
何が言いたいのか分からない八木沢は気にせずお菓子を食べていた。
「あの容姿で身長が高いのが許せねぇ」
へぇ、と適当に頷いて麦茶を口にする。
「もっと男らしいヤツなら分かるんだが、あれだけ艶があるのに……」
ぐちぐちと言葉を続ける東金を半分以上聞き流していた八木沢だったが、ラウンジに現れた人物が目に入り自分の分を片付け始めた。
だが東金は自分の背後から近づいてくる姿に気付くわけもなく、延々と語る。
「つまり、千秋は上になりたいっちゅうこと?」
「そういうわけじゃないが、たまにはそういう日もあっていいだろ」
これ以上は関わり合いになりたくない、と思った八木沢は土岐に会釈をして自分の食器を持ってキッチンの方へと足を向ける。
土岐は東金の首に腕を回し、へぇ、と言いながら艶かしい表情で彼を見る。
その光景はヘビの様にも思えたが、東金が進んで絡まれようとしているのだろうから八木沢の与り知るところではない。
「一昨日の夜は千秋が上やったろ?」
「たまにはお前が女役をやってみろって意味だ」
聞きたくもない幼馴染の夜の事情が嫌でも耳に入ってくる。
こんなことならさっさと逃げていればよかった、と思う八木沢だった。
- 作品名
- 4cm差
- 登録日時
- 2010/04/17(土) 15:29
- 分類
- 土岐×東金