仕方ない、と俺はこのまま布団の中で処理をすることにする。
こんな状態でやりたくないが、背に腹は変えられない。
背中から蓬生の呼吸が伝わってくる。
起こさないように、とその呼吸に合わせて自分も息を吐く。
そして自身を取り出して手にする。
何をやってるんだろうな、俺は。
一人でやるときとも体を重ねるときとも違う緊張感。
本当にいいのか、と疑問が出るが強くなる欲望には勝てない。
そのままゆっくりと擦る。
背徳感がいつも以上に興奮を煽る。
背中の気付かれないように、ゆっくりと息を吐く。
伝わってくる温度は変わらない。
もう一度、今度は力を強くする。
いつもと同じ行為のはずなのに。
これは、やばい。
ふと、自分の腰にある彼の手が目に入った。
ちょっとした好奇心がよぎる。
――もし、蓬生の手を使ったらどんな感じだろうか
理性が止めようとし、もう一度自分の手で自身を慰める。
だが時折微かに動く彼の指が俺の腹を撫でる度に、好奇心は強くなる。
「堪忍な」
彼に聞こえない程度の声で謝罪の言葉を言う。
そして、彼の手を取り指を絡ませる。
蓬生の指は本人の顔同様とても綺麗で、そんな指を自在に使う。
ごくりと咽喉がなる。
ゆっくりと、手の位置を下へとずらす。
起こさないように、慎重に。
本来はこういうやり方は性に合わないが、今は目の前の誘惑に負けてしまう。
彼の手で、俺のものを包むとピクリと彼の指が動いた。
だが、その一瞬だけでやはり起きていない。
ほっと一息をつき、行為を始めることにした。
彼の指で俺の根元を掴み扱く。
俺が気持ちいいと思うところへ彼の指を誘導し、そこを刺激する。
蓬生がヴァイオリンを習い始めたときポジションを教えたことがあったが、それに似ていると感じた。
もっとも、あの頃はまさかこんな関係になるとは思っていなかったが。
俺の先走りをわざと蓬生の指につけると、部屋に水音が響く。
それが妙に官能的で余計に興奮してしまう。
……俺もコイツの変態さに毒されているのかもな。
俺自身を握る力を強くしペースも上げる。
「っ……は、ぁ」
俺自身も、起こさないように堪えていた声を我慢するのも限界に近い。
もう少しだ、と思った瞬間俺を強く握り締める感覚。
予想だにしなかった衝撃に、頭が白くなり俺は欲望を吐き出した。
「なに一人で楽しんどるん?」
先ほどまで寝息を立てていた蓬生はまだ眠そうな声で俺を抱きしめる。
果てたばかりなので体がダルい俺に、蓬生は自分の指を俺の唇に軽く当てる。
彼が望むままにそのまま彼の指を咥える。
だが、俺のものが付いているのだから当然不味い。
険しい顔をすると、蓬生が耳元でクスと笑う声がした。
「悪い、こんなことをするつもりじゃなかったんだ」
本当はお前が離さなかったからだと言いたかったが、それでも一人ですればよかっただけの話で。
彼の指を勝手に使ってしまったことは反省している。
「ん、別にええよ?」
だが、蓬生はあっさりと言う。
いいのか?と思ったが、彼の言葉は終わりではなかった。
「今度千秋が寝とう間に口で奉仕してもらうから」
クスクスと笑う蓬生。
コイツなら本気でやりかねない。
どうやってそれだけは遠慮をしてもらおうか。
自分の行いを反省しながら、これからのことを考えていた。
- 作品名
- 背中越し
- 登録日時
- 2010/04/16(金) 00:34
- 分類
- 未分類