君と合奏わせたい。
僕の素直な言葉に彼は不機嫌になる。
「今、何をしているか分かるか?」
執務室に来て僕はソファーに座る。
彼は見ての通り仕事中だ。
「分かっているからここに来たつもりだけど?」
「なら帰れ」
不機嫌を全開にした彼は僕から視線を外して仕事を再開する。
僕も気にせず、彼の仕事をする様子を眺める。
別に急ぐわけでもないし、冥加の時間が出来ればそのときにすぐ合奏をしたい。
静かな部屋にペンが走る音と紙が擦れる音。
今はその音を楽しむことにする。
「……楽しいか?」
ペンの音が止まる。
「楽しいかといわれれば首を傾げるね」
ふふっと笑えば重いため息が部屋に響く。
「じゃあ帰れ。明日には相手をしてやる」
「すぐにでも弾きたいから待っているんだけど」
わざと困らせるようなことを言えば、冥加の眉間の皺は深くなる。
目線で諦めろ、と訴えかけてくるが僕は無視をする。
「知ってるでしょ?僕、意外とあきらめ悪いから」
分かっている、と彼は目を伏せて頭に手を当てる。
そんな冥加を僕は楽しそうに観察してしまう。
悪い癖だと思っているが、彼を困らせるのは楽しい。
こちらの視線に我慢が出来なくなった冥加が席を立つ。
僕も彼に合わせて立ち上がる。
「一曲だけだぞ」
自分の愛器を手にして部屋を出ようとする彼の後を僕はついていく。
「十分だよ」
なんだかんだで冥加はこうしていつも付き合ってくれる。
だから僕も付け上がってしまうんだ。
※ ※ ※
お題セリフ「俺、意外とあきらめ悪いんだ」
- 作品名
- 地獄の底までフライアウェー
- 登録日時
- 2010/04/10(土) 20:10
- 分類
- 未分類