いつも彼は気丈だった。
だから彼が泣く姿というのは見たことがなかったし、見たいとも思えなかった。
ただ、今になって彼がみっともなく泣いている姿を見て
僕の口元は緩んだ。
「ねえ冥加?」
泣く彼を腕に抱く。
力なくただ僕に体を預ける彼。
ただ溢れ続ける涙が僕の服を濡らす。
「大丈夫だよ、冥加」
子供をあやすように彼の背中をさする。
僕の思惑に気付かない彼は小さい嗚咽をあげる。
その声に僕の頭は冷める。
彼を自分のものにするには今しかない、と。
緊張して彼に気付かれないように唾を飲み込む。
そして優しい声色を使って彼に囁きかける。
「悲しいことは全部、僕が食べてあげるから」
――君ごと、ね。
※ ※ ※
お題セリフ「悲しいことは全部、僕が食べてあげるよ」
- 作品名
- 食いしん坊万歳
- 登録日時
- 2010/04/09(金) 21:56
- 分類
- 未分類