彼の体のどこが好きかと聞かれれば僕は即座に答えられる。
「楽しいか?」
その一番好きなところに僕は何度もキスをする。
「ああ、すごくね」
キスをしては、舌を遣い、時には吸うこともある。
彼はその度に不可解だと言わんばかりの顔をする。
「冥加は嫌い?」
それを口に咥えたまま上目遣いで聞いてみる。
男の上目遣いなんて可愛げも何もないと思うが、冥加がたじろぐくらいだから多少の効果はあるのかもしれない。
「嫌いとかではなく、理解が出来ない」
へぇ、と。
そんな冥加を困らせてみたくなる。
「じゃあ同じことやってみるかい?」
彼が断ろうと口を開けた隙に、自分の指をすべらせた。
そして閉じようとする前に、逃げようとする彼の舌を捉えた。
一方自分の口の中にある彼の指に僕の舌を絡め、その味を確かめる。
そう、僕は彼の体で指が一番好きだ。
人差し指で舌の輪郭を、中指で彼の頬をなぞる。
「逃げないで」
親指で唇をなぞりながら僕の指のせいで垂れようとする涎を掬う。
一方僕の口元はというと、彼の指を甘噛みしたり、指の付け根を舐めたりしている。
「ねえ知ってる?」
彼の指から口を外し、今度は手のひらを中心から中指に向かって辿る。
「指って立派な性感帯なんだよ」
そう言って、彼の口から指を離す。
「だから指が好きなのか?」
いつもどおりの不機嫌そうな声。
「まさか」
ふふっと笑う僕に冥加はより不機嫌になる。
これ以上からかうと後が面倒になりそうだ。
「君の指から生まれる音が好きだからだよ」
これは本当の理由だ。
それなのに彼は「どうだか」と一蹴する。
だから余計にからかってしまいたくなる。
「それと」
彼の薬指に口を付け、言葉を続ける。
「指なら君は僕に傷をつけようとしないからね」
この理由にはどうやら納得がいった様で、彼は満足そうに笑った。
「代わりに冥加が僕の好きなところ教えてあげようか?」
彼はすごく嫌そうな顔でこちらをみる。
「言うな」
ただ一言、彼は言おうとしない。
だからつい困らせてみたくて言ってしまう。
――指、でしょ?
- 作品名
- 同調
- 登録日時
- 2010/04/03(土) 00:54
- 分類
- 天宮×冥加